特定用途に最適化された設計によって高精度な信号処理を可能にすることから、幅広い分野で活用されるアナログASIC。この記事では、アナログASICの特徴や用途、設計を依頼する際のポイントについて解説します。
アナログASICとは、ゴールとなる用途や機能に特化して設計された回路で、電圧・電流・周波数などの連続的(アナログ)な信号を直接扱います。
例えば、センシング信号の増幅やフィルタリング、基準電圧の生成、ノイズ除去など、目的に応じた性能を追求するためにトランジスタの動作点やレイアウト構造が細かくチューニングされます。汎用的なアナログ部品では満たせない微細な要求仕様に応えるために、設計の自由度を活かして最適化を図るのが特徴です。
デジタルASICが0と1の離散信号を用いて論理演算やデータ処理を行うのに対し、アナログASICは電圧や電流といった連続量を直接処理する点が大きな違いです。デジタルは高速処理や大規模演算に強みがありますが、アナログは微小信号の検出や高精度の増幅、リアルタイムな波形制御などに優れています。デジタルASICとアナログASICは競合の関係ではありません。相互補完的に利用されることがあります。
産業機器やIoT分野では、アナログフロントエンド(AFE)がセンサー信号処理の要となります。微小なセンサーデータを高精度に増幅・変換し、デジタル回路へ正確に渡すことでシステム全体の性能を支えます。日本企業では製造プロセスやパッケージ技術を駆使し、多様な産業・IoT用途に適したカスタムソリューションが提供されています。
高速かつ信頼性の高い画像・信号処理が求められる通信やOA機器においては、アナログASICが不可欠です。複合機やカメラでは、高速レンダリングや動画圧縮処理などを担う専用ASICが活用され、日本の機器開発にも広く導入されています。用途特化による高性能化要求は、通信分野や画像処理機器でアナログASICが活用される大きな要因です。
設計者と発注者の間で認識のズレが発生しないよう、仕様を明確にすることが重要です。増幅、フィルタ、センサータイプなど要求される機能、入力レンジ/出力レンジ、帯域幅、ノイズ許容値、消費電力、温度特性、電源電圧、立ち上げ動作やパワーアップシーケンスなど、詳細な動作条件を設計依頼書(仕様書)に盛り込む必要があります。
信号遅延、クロストーク、リニアリティ、歪み、安定性などの性能指標を定量化すること、動作環境や寿命要件も含めましょう。
そのASICを製造するプロセスノードが将来もサポートされるか、標準プロセスの廃止やファウンドリの変更がないか、またパッケージの供給や試験設備、テストプローブ等が継続できるかなどをチェックします。品質保証として、信頼性試験をどのレベルで行うか、歩留まりや故障率保証、部品バラつきに対する対応、またアフターサポートの契約条件を交えておくことが望ましいです。
アナログASICの開発・製造を外注する前に確認しておきたい判断基準や注意点をまとめました。
アナログASICとは、センサー信号の増幅、電源制御、A/D変換、D/A変換、フィルタ処理など、特定のアナログ機能に合わせて設計されるカスタムICです。汎用ICを組み合わせるのではなく、製品に必要な性能や回路構成に合わせて専用設計する点が特徴です。
部品点数の削減、基板面積の縮小、消費電力の最適化、ノイズ対策などが期待できますが、専用設計になるため、初期開発費や評価期間を含めて検討する必要があります。
既存のディスクリート部品や汎用ICの組み合わせで、基板面積、消費電力、ノイズ、部品調達、検査工数、製品ばらつきなどに課題が出ている場合は、アナログASIC化を検討する価値があります。
特に、同じ回路を長期間・一定数量以上で量産する製品では、部品点数や実装工数の削減によって、開発費を回収しやすくなる可能性があります。
最初から完全な仕様書がなくても相談は可能ですが、現在の回路構成、解決したい課題、目標性能、使用環境、量産予定数、希望スケジュールは整理しておくと検討が進みやすくなります。
アナログASICでは、入力信号の範囲、電源電圧、消費電流、ノイズ許容値、温度条件、周辺部品、基板上の制約などが重要です。これらが曖昧なままだと、見積もりや実現性判断の精度が下がることがあります。
相談自体は可能です。むしろ、仕様が完全に固まる前に相談することで、ASIC化に向いているか、どの仕様を先に決めるべきか、どの部分に開発リスクがあるかを早めに確認できます。
ただし、「何を実現したいか」が曖昧すぎると、設計方針や費用感を出しにくくなります。相談前には、必須条件と希望条件を分けて整理することが有効です。
開発費用は、仕様検討、回路設計、レイアウト設計、検証、マスク費用、試作、パッケージ、評価、量産立ち上げなどの項目で決まります。カスタム性が高いほど、設計や検証にかかる工数は増えやすくなります。
費用を見る際は、初期開発費だけで判断しないことが大切です。量産単価、部品点数削減、基板面積削減、検査工数削減、長期供給の安定性まで含めて、製品ライフサイクル全体で比較する必要があります。
失敗しやすいのは、要求仕様が曖昧なまま設計に進むケース、実使用環境の条件が十分に共有されていないケース、評価方法が後から決まるケースです。
アナログASICでは、ノイズ、温度、電源変動、個体差、周辺部品、基板レイアウトの影響が性能に関わります。試作チップ単体では問題がなくても、実際の基板や装置に組み込んだときに課題が見つかることもあります。
確認すべきなのは、アナログ回路の設計実績、仕様検討への対応力、シミュレーション・評価体制、量産支援、検査設計、不具合時の解析体制です。単に「設計できるか」だけでなく、試作後の評価や量産時の品質管理まで対応できるかを見る必要があります。
相談時には、技術的な論点を具体化してくれるか、リスクや前提条件を説明してくれるか、量産や検査まで見据えた提案があるかを確認しましょう。設計範囲・評価範囲・量産時の責任範囲を事前に確認することが、外注後のトラブル防止につながります。
アナログASICは、用途や仕様に合わせて最適化された設計により、高精度かつ高効率な信号処理を実現する専門性の高いカスタム半導体です。産業機器やIoT、通信機器など幅広い分野で重要な役割を果たし、汎用品では対応できない性能要求に応えます。
設計依頼に際しては、性能指標の明確化から長期供給、品質保証までを見据えた仕様整理が不可欠です。信頼できる設計パートナーを選ぶことで、安定した製品開発と競争力の強化につながります。
用途に特化した高性能な半導体を実現するための要であるASICは、メーカーによって得意とする領域や対応の柔軟性、設計支援体制に大きな差があります。
ここではASICの導入や開発を検討している企業担当者に向けて、信頼できるASICメーカー3社を厳選。それぞれの特徴や得意分野をわかりやすく紹介します。
500nm/350nm/250nm/180nm
OA機器/産業機器/住宅関連機器/車載/EOL相当品開発

90nm/65nm/55nm/40nm/28nm/16nm/12nm/7nm/5nm
TV/LPWA/衛星通信/スマートセンサー

TSMC:28nm/16nm FFC/5nm/7nm(計画中)
GF:22nm FDSOI/12nm(計画中)
PON向け高速シリアルインターフェース(SerDes)
※1参照元:ジェピコ・セミコンダクター公式HP(https://www.jepico-semiconductor.co.jp/)
※2参照元:日経クロステック(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/02214/)
※3参照元:メガチップス公式HP(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)
※4参照元:メガチップス(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)