センサー用ASICの開発事例では、何をICに取り込むかによって設計課題が変わります。このページでは、信号の増幅・フィルタリングを担う産業機器向け、多数の入力を切り替えて扱うOA機器向け、CMOSイメージセンサーのデジタルブロック設計という3例を比較します。3例目は完成ASICの導入実績ではなく、センサー向けLSIの設計事例です。
| 事例 | 主な機能 | 検討の焦点 |
|---|---|---|
| 産業機器 | 高ゲインアンプ、フィルタ、ピークホールド | センサーに合わせた入力・増幅・帯域の配分 |
| OA機器 | センサードライバ、入力MUX、ゲイン・オフセット調整 | 多点入力の時分割とセンサーごとのばらつき |
| CMOSイメージセンサー | 画素駆動・画像処理のデジタルブロック | 既存仕様からの変更点と検証範囲 |
公開されている構成:ジェピコ・セミコンダクターの事例には、高ゲインアンプ、BPF・LPF・HPFのフィルタ設定、ピークホールド検波回路を組み込んだセンサー信号処理ICがあります。入力センサーの特性に合わせて、インピーダンス、フィルタ配分、ゲイン配分を検討する構成です。
設計上の読みどころ:ゲインの値だけでは判断できません。センサーの出力範囲と帯域、外乱が重なる周波数、検出したいピークの時間幅を揃えておくと、増幅段とフィルタ段の役割を決めやすくなります。フィルタで残す信号と捨てる信号を先に決めることが、回路構成の検討につながります。
公開されている構成:同社のOA機器向け事例では、センサードライバ、入力マルチプレクサ、ゲインコントロールアンプ、オフセット調整機能、ピークホールド検波回路を組み合わせています。多数のセンサーアレイを時分割で読み取り、オフセット調整値をセンサーごとに設定できる構成です。
設計上の読みどころ:多点化では、入力数だけでなく、各チャンネルに割ける取得時間が設計を左右します。切り替え直後に信号が落ち着く時間、必要なサンプリング周期、チャンネルごとの補正値をどう保持・更新するかをセットで確認したいところです。公開事例は実装面積の縮小可能性を示していますが、縮小率などの実測値は示していません。
公開されている構成:三栄ハイテックスが公開しているのは、監視カメラ、車載、医療向けなどのCMOSイメージセンサー開発におけるデジタルブロック設計です。画素駆動系のローリング/グローバルシャッター制御、露光時間・ADC制御、画像処理系のROI、画素加算、歪曲補正、スケーラなどが機能例として挙げられています。
設計上の読みどころ:この事例で参考になるのは、機能を列挙するだけで終わらせない検証の組み立て方です。ベースとなるセンサーの仕様・設計資産との差分を抽出し、機能仕様と設計仕様から検証項目を追跡しています。画像処理はC言語などの参照モデルとの一致、制御系はSystemVerilogなどを用いた検証が紹介されています。
最初に決めたいのは「センサーまわりをすべて1チップにするか」ではなく、どの信号処理を共通回路にまとめ、どこを外部部品や後段処理に残すかです。産業機器の例はアナログ入力の整形、OA機器の例は多点入力の制御、CISの例は画素駆動・画像処理の設計が中心で、同じ「センサー用」でも必要な設計能力は異なります。
順番に読み取れるなら入力MUXで回路を共用できます。一方、同時刻の値が必要な計測では、時分割の構成が要件に合わない場合があります。チャンネル切り替え後の安定時間も含め、センサー数と取得周期を一緒に指定します。
オフセット、ゲイン、温度による変化を一括して「精度」と扱うと、必要な回路を絞れません。製造時に固定する補正値と、運用中に更新する値を分け、補正値の保存先と書き換え条件まで決めておくと検討しやすくなります。
| 確認すること | 伝える内容 |
|---|---|
| 入力と必要な測定品質 | センサーの出力範囲・出力インピーダンス、必要帯域、許容ノイズ・オフセット・温度変動 |
| 読み取り方 | チャンネル数、同時測定の要否、各チャンネルの取得周期と切り替え後の安定時間 |
| 補正と後段処理 | 補正項目、値を決める時点、保存・更新方法、ADCやマイコンとの分担 |
| 量産条件 | 想定数量、実装面積・消費電力の上限、動作環境、供給期間と既存部品のEOL条件 |
ASIC化で小型化や長期供給を目指す場合も、試作評価と量産条件の確認が必要です。既存ICの置き換えなら、パッケージ寸法だけでなく入出力特性や起動時の振る舞いまで比較します。
センサー用ASICの事例を見るときは、用途名よりも、入力信号・読み取りタイミング・補正・後段処理のどこを設計対象にしているかを見ると、自社の課題に近い例を選びやすくなります。センサーの仕様と現行回路の制約を整理したうえで、下の「目的別ASICメーカー3選」で対応領域を比べてみてください。
用途に特化した高性能な半導体を実現するための要であるASICは、メーカーによって得意とする領域や対応の柔軟性、設計支援体制に大きな差があります。
ここではASICの導入や開発を検討している企業担当者に向けて、信頼できるASICメーカー3社を厳選。それぞれの特徴や得意分野をわかりやすく紹介します。
500nm/350nm/250nm/180nm
OA機器/産業機器/住宅関連機器/車載/EOL相当品開発

90nm/65nm/55nm/40nm/28nm/16nm/12nm/7nm/5nm
TV/LPWA/衛星通信/スマートセンサー

TSMC:28nm/16nm FFC/5nm/7nm(計画中)
GF:22nm FDSOI/12nm(計画中)
PON向け高速シリアルインターフェース(SerDes)
※1参照元:ジェピコ・セミコンダクター公式HP(https://www.jepico-semiconductor.co.jp/)
※2参照元:日経クロステック(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/02214/)
※3参照元:メガチップス公式HP(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)
※4参照元:メガチップス(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)