アナログ回路とデジタル回路を1チップ上に集積し、センサー信号の取得から演算・制御までを効率化できるミックスドシグナルASIC。この記事では、ミックスドシグナルASICの特徴や用途、設計を依頼する際のポイントについて解説します。
ミックスドシグナルASICとは、アナログ信号を扱う回路とデジタル処理を行う回路を同一チップ上に集積したASICです。センサーから入力される電圧・電流などの連続的な信号を増幅・変換し、デジタル回路で演算や制御を行うなど、アナログとデジタルの橋渡しを担います。
代表的な構成としては、アナログフロントエンド(AFE)、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、PLL、電源管理回路、ロジック回路、インターフェース回路などが挙げられます。複数の汎用ICやディスクリート部品で構成していた機能を1チップ化することで、小型化・低消費電力化・ノイズ低減・部品点数削減を図れる点が特徴です。
アナログASICが電圧や電流などの連続信号を中心に扱い、デジタルASICが0と1の離散信号による論理演算やデータ処理を担うのに対し、ミックスドシグナルASICはその両方を1つのチップに統合します。
例えば、センサー信号をアナログ回路で増幅し、A/D変換によってデジタルデータ化し、その後に補正・演算・通信制御を行うような用途では、ミックスドシグナルASICが有効です。アナログ性能とデジタル制御の両立が求められるため、回路設計だけでなく、ノイズ分離、レイアウト、電源設計、検証設計まで含めた総合的な設計力が重要になります。
センサー機器やIoT分野では、温度、圧力、光、音、加速度、電流などのアナログ信号を高精度に取得し、デジタルデータとして処理・送信する必要があります。ミックスドシグナルASICは、センサー信号の増幅、フィルタリング、A/D変換、補正処理、通信制御までを一体化できるため、小型化や省電力化が求められる機器に適しています。
特に、電池駆動のIoTデバイスやウェアラブル機器、産業用センサーモジュールでは、消費電力や実装面積、ノイズ耐性が製品性能に直結します。ミックスドシグナルASIC化によって、外付け部品を減らしながら製品仕様に合わせた最適設計が可能になります。
医療機器や計測機器では、微小な生体信号や測定信号を正確に扱う必要があります。ミックスドシグナルASICは、低ノイズなアナログ信号処理と高精度なデジタル補正・制御を組み合わせられるため、心電計、血糖測定器、検査装置、各種計測モジュールなどで活用が検討されます。
高い信頼性や再現性が求められる分野では、単に回路を集積するだけでなく、温度変化、電源変動、個体差、長期使用時の安定性を考慮した設計が欠かせません。ミックスドシグナルASICでは、アナログ特性とデジタル補正を組み合わせることで、製品ごとの性能ばらつきを抑える設計も可能です。
通信機器や車載機器では、高速な信号処理、ノイズ耐性、低遅延、長期信頼性が求められます。ミックスドシグナルASICは、アナログ信号の入出力、クロック生成、データ変換、デジタル制御を統合できるため、通信モジュール、インターフェースIC、車載センサー、電源制御回路などに適しています。
車載用途では、温度範囲、振動、電磁ノイズ、長期供給、品質保証などの条件が厳しくなります。そのため、ミックスドシグナルASICの設計では、回路性能だけでなく、評価・検査・量産時の品質管理まで見据えた開発体制が重要です。
ミックスドシグナルASICでは、アナログ回路とデジタル回路が同じチップ内で動作するため、双方の要求仕様を整理しておくことが重要です。入力信号の範囲、ノイズ許容値、変換精度、サンプリング周波数、帯域幅、電源電圧、消費電力、温度条件、通信インターフェース、制御ロジックなどを明確にする必要があります。
特に、A/D変換やD/A変換を含む場合は、分解能、変換速度、リニアリティ、オフセット、ゲイン誤差、クロック精度などが性能に影響します。要求仕様が曖昧なまま開発に進むと、試作後に性能不足やノイズ問題が発生する可能性があるため、設計初期の段階で合否基準を定量化しておきましょう。
ミックスドシグナルASICでは、デジタル回路のスイッチングノイズがアナログ回路に影響することがあります。そのため、アナログ領域とデジタル領域の分離、電源・グラウンド設計、クロック配線、基板との接続条件を考慮したレイアウト設計が欠かせません。
チップ単体の性能だけでなく、パッケージ、基板、周辺部品、実装環境まで含めてノイズ経路を検討する必要があります。外注先を選ぶ際は、回路設計の実績に加えて、レイアウト設計、シミュレーション、評価、量産時の検査設計まで対応できるかを確認しましょう。
ミックスドシグナルASICは、アナログ特性とデジタル動作の両方を評価する必要があります。試作後の評価では、電気的特性、ノイズ特性、変換精度、温度特性、通信動作、異常時の挙動などを確認することが重要です。
また、量産を見据える場合は、テスト項目、検査時間、歩留まり、パッケージ、長期供給、品質保証の条件も整理しておく必要があります。開発費だけでなく、量産単価や検査コスト、製品ライフサイクル全体のコストまで含めて検討することで、ASIC化のメリットを判断しやすくなります。
ミックスドシグナルASICの開発・製造を外注する前に確認しておきたい判断基準や注意点をまとめました。
ミックスドシグナルASICとは、アナログ回路とデジタル回路を同一チップ上に集積したカスタムICです。センサー信号の増幅、A/D変換、D/A変換、電源制御、ロジック処理、通信制御などを、製品の用途に合わせて専用設計できます。
複数の汎用ICやディスクリート部品を組み合わせる構成と比べて、部品点数の削減、小型化、消費電力の最適化、ノイズ低減などが期待できます。ただし、アナログとデジタルの相互影響を考慮した設計・検証が必要です。
センサー信号処理、A/D変換、D/A変換、デジタル補正、通信制御などを複数部品で構成しており、基板面積、消費電力、ノイズ、部品調達、実装工数、検査工数に課題がある場合は、ミックスドシグナルASIC化を検討する価値があります。
特に、同じ機能を長期間・一定数量以上で量産する製品では、1チップ化による部品点数削減や性能安定化によって、製品全体の競争力向上につながる可能性があります。
現在の回路構成、解決したい課題、目標性能、使用環境、量産予定数、希望スケジュールを整理しておくと、外注先との検討が進みやすくなります。既存回路や評価データがある場合は、相談時に共有できるよう準備しておくとよいでしょう。
ミックスドシグナルASICでは、入力信号の範囲、変換精度、サンプリング条件、ノイズ許容値、電源電圧、消費電流、温度条件、通信インターフェース、制御仕様などが重要です。これらが曖昧なままだと、実現性判断や見積もりの精度が下がることがあります。
アナログASICは、増幅、フィルタ、基準電圧生成、電源制御など、アナログ信号処理を中心に設計されるASICです。一方、ミックスドシグナルASICは、アナログ信号処理に加えて、A/D変換、D/A変換、デジタル補正、ロジック制御、通信機能などを同一チップに統合します。
センサーからの信号をアナログ回路で処理し、その後デジタル回路で演算・補正・制御するような用途では、ミックスドシグナルASICの方が適している場合があります。
開発費用は、仕様検討、アナログ回路設計、デジタル回路設計、レイアウト設計、シミュレーション、検証、マスク費用、試作、パッケージ、評価、量産立ち上げなどの項目で決まります。アナログとデジタルの双方を含むため、設計範囲が広いほど工数は増えやすくなります。
費用を検討する際は、初期開発費だけでなく、量産単価、部品点数削減、基板面積削減、検査工数削減、調達リスク低減、長期供給の安定性まで含めて比較することが大切です。
失敗しやすいのは、アナログ仕様とデジタル仕様の接続条件が曖昧なまま設計に進むケース、ノイズ対策や電源設計の検討が不足しているケース、評価方法が後から決まるケースです。
ミックスドシグナルASICでは、デジタル回路のスイッチングノイズがアナログ性能に影響することがあります。また、チップ単体では問題がなくても、実際の基板や装置に組み込んだ際にノイズ、タイミング、電源変動などの課題が見つかることもあります。
確認すべきなのは、アナログ回路とデジタル回路の両方に対応できる設計実績、A/D・D/A変換回路の開発経験、ノイズ対策、レイアウト設計、シミュレーション、評価、検査設計、量産支援の体制です。
相談時には、仕様の不明点を具体化してくれるか、設計リスクや前提条件を説明してくれるか、試作後の評価や量産時の品質管理まで見据えた提案があるかを確認しましょう。設計範囲・評価範囲・量産時の責任範囲を事前に確認することが、外注後のトラブル防止につながります。
ミックスドシグナルASICは、アナログ信号処理とデジタル制御を1チップ上に統合することで、小型化、低消費電力化、ノイズ低減、部品点数削減を実現しやすいカスタム半導体です。センサー機器、IoT機器、医療機器、計測機器、通信機器、車載機器など、幅広い分野で活用が期待されます。
設計依頼に際しては、アナログ・デジタル双方の仕様整理、ノイズ対策、評価方法、量産条件までを見据えた検討が不可欠です。実績のある設計パートナーに相談することで、製品仕様に合わせた最適なASIC化と、安定した量産体制の構築につながります。
用途に特化した高性能な半導体を実現するための要であるASICは、メーカーによって得意とする領域や対応の柔軟性、設計支援体制に大きな差があります。
ここではASICの導入や開発を検討している企業担当者に向けて、信頼できるASICメーカー3社を厳選。それぞれの特徴や得意分野をわかりやすく紹介します。

500nm/350nm/250nm/180nm
OA機器/産業機器/住宅関連機器/車載/EOL相当品開発

90nm/65nm/55nm/40nm/28nm/16nm/12nm/7nm/5nm
TV/LPWA/衛星通信/スマートセンサー

TSMC:28nm/16nm FFC/5nm/7nm(計画中)
GF:22nm FDSOI/12nm(計画中)
PON向け高速シリアルインターフェース(SerDes)
※1参照元:ジェピコ公式HP(https://www.jepico.co.jp/analog-asic/development_case.html)
※2参照元:日経クロステック(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/02214/)
※3参照元:メガチップス公式HP(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)
※4参照元:メガチップス(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)