画像処理・カメラ向けASIC導入事例

カメラを搭載した機器は、監視カメラや車載カメラ、医療用カメラ、産業用検査装置、スマートフォンなど多岐にわたり、幅広い分野で使われています。これらの機器では、イメージセンサーで取得した映像を、いかに高速・低遅延・低消費電力で処理するかが製品の性能を左右します。

この記事でわかること

  • 画像処理・カメラ分野でASICが求められる背景(汎用ICとの違い)
  • CMOSセンサー/リアルタイム鮮明化/車載/アナログの4つの導入事例
  • ASIC開発の前に固めておきたい4つの確認ポイント

画像処理では、レンズやセンサー固有の補正、ノイズ除去、HDR合成、歪み補正、物体認識といった多くの演算を、限られた基板面積と電力のなかで実行しなければなりません。汎用のISP(イメージシグナルプロセッサ)や汎用SoCの組み合わせだけでは、処理性能・消費電力・実装面積の面で課題が残る場合があります。そこで選択肢となるのが、用途に合わせて回路を最適化する画像処理・カメラ向けのASICです。センサー駆動から信号処理、画像補正までを1チップ化しやすいため、カメラ機器の開発において有効な手段となります。

画像処理・カメラ分野でASICが求められる背景

デジタルカメラは、大きく4つの要素で構成されます。それぞれの役割を整理すると、どこを専用チップ化できるかが見えてきます。

光学系(レンズ・シャッター)
被写体からの光を取り込む
イメージセンサー(IS)
光を電気信号に変換する
イメージシグナルプロセッサ(ISP)
センサー固有の補正・調整を行う(歪曲収差補正、シェーディング補正、露光・ゲイン制御、欠陥補正、ノイズ除去、デモザイク処理、HDR合成など)
アプリケーションプロセッサ(AP)
用途に応じた処理を担う

これらの処理をすべて汎用ICで構成すると、部品点数や基板面積が増え、消費電力や処理遅延の面で不利になることがあります。カメラを搭載する機器は監視・車載・医療・産業など多様で、求められる解像度やフレームレート、電源条件も異なるため、用途に合わせて必要な回路だけを専用チップとして集積できるASICが向いています。

処理速度
汎用ICの組み合わせ
汎用構成に依存し頭打ちになりやすい
画像処理・カメラ向けASIC
用途に合わせて高速化しやすい
消費電力
汎用ICの組み合わせ
不要機能も動作し不利になりやすい
画像処理・カメラ向けASIC
必要な回路だけに最適化できる
実装面積
汎用ICの組み合わせ
部品点数・基板面積が増えがち
画像処理・カメラ向けASIC
1チップ化で小型化しやすい
作り込み
汎用ICの組み合わせ
既製品の仕様に合わせる必要がある
画像処理・カメラ向けASIC
製品仕様に合わせて設計できる

POINT 汎用品の組み合わせと比べ、処理速度・消費電力・実装面積を製品仕様に合わせて最適化できる点がメリットです。

参照元:三栄ハイテックス公式HP(https://www.sanei-hy.co.jp/blog/2023/03/00244/)

画像処理・カメラ向けASICの導入事例

画像処理・カメラ向けASICは、CMOSイメージセンサーのデジタル設計、リアルタイム画像処理、車載カメラ、センサー信号処理など、さまざまな分野で活用が検討されています。まずは4つの事例を一覧で見てから、それぞれを詳しく紹介します。

CMOSイメージセンサー向けデジタル設計の事例

CMOSイメージセンサーの分野では、監視カメラ・車載カメラ・医療機器などの用途に対応したデジタルブロック設計の事例があります。画素駆動系ではローリングシャッターやグローバルシャッター制御、HDR合成、ADC制御などの機能を実装し、画像処理系ではROI設定、画素加算、歪曲補正、スケーリングといった処理機能が搭載されています。

三栄ハイテックスの事例では、既存のカメラシステムをベースに、専用ISPとAPをFPGAで開発し、試作や少量生産に対応した実績も紹介されています。

POINT 用途に合わせて画像処理ブロックを設計することで、小型化・低ノイズ化と画質の作り込みを両立できます。

参照元:三栄ハイテックス公式HP(https://www.sanei-hy.co.jp/case/lsi/cis/)

リアルタイム画像鮮明化ISPのASIC・SoC化事例

暗所や逆光、霧・煙などの環境では、カメラ映像が不鮮明になり、監視や検査の精度が低下します。ロジック・アンド・デザインでは、独自の画像鮮明化アルゴリズム「LISr」をASICチップ「LISr-ISP SoC」として実装し、リアルタイム処理で0.004秒以内という低遅延の鮮明化を実現した事例を公開しています。

アルゴリズムをSoC化することで、より小型・省電力なモジュールとして構成できるとされています。

POINT 防犯カメラや医療機器、検査機器、ドローンなど、さまざまな撮影機材へ組み込みやすくなります。特定の画像処理を専用チップ化するASICの活用イメージがつかみやすい事例です。

参照元:ロジック・アンド・デザイン公式HP(https://www.lad.co.jp/news/20241028-02/)

センサー信号処理を担うアナログASICの事例

イメージセンサーから得られる信号は微弱で、ノイズの影響を受けやすいため、増幅回路やフィルタ回路、A/D変換回路などの設計が画質を左右します。ジェピコ・セミコンダクターの開発事例では、各種センサーのドライブ回路や増幅回路、フィルタ回路、検出回路を最適に配置し、必要なアナログ信号成分のみを抽出するアナログASICが紹介されています。

POINT 個別部品で構成する場合と比べ、センサー特性に応じたゲインやフィルタ特性を最適化しやすく、実装面積の削減と信号品質の安定化が期待できます。

参照元:ジェピコ・セミコンダクター公式HP(https://www.jepico-semiconductor.co.jp/development-case/)

画像処理・カメラ向けASIC開発で確認したいポイント

画像処理・カメラ向けASICを検討する際は、単に機能を集積するだけでなく、製品として求められる画質・処理速度・電力・量産性まで見据えて仕様を固めることが重要です。次の4点を押さえておきましょう。

01 IS・ISP・APのどこまでを1チップ化するか

カメラシステムは、イメージセンサー、ISP、APをどう分担させるかで構成が変わります。汎用品を組み合わせてコストを抑える構成もあれば、ISとISPを1つの専用ICにまとめて小型化する構成、専用ISP・APで高機能なカメラを実現する構成もあります。どの機能を専用チップ化するかによって、開発規模やコスト、差別化のポイントが変わるため、製品戦略に合わせた切り分けが必要です。

02 リアルタイム性と低遅延処理の要件

監視・車載・検査などの用途では、映像処理の遅延が判断の遅れに直結します。フレームレートや解像度、必要な画像処理の内容を整理し、どの処理を専用回路で高速化するかを検討することが重要です。

CHECK 専用回路化により、汎用プロセッサでは難しいリアルタイム処理を低消費電力で実現できる場合があります。

03 低消費電力化と発熱対策

常時稼働する監視カメラやバッテリー駆動のカメラ機器では、消費電力と発熱を抑える設計が欠かせません。必要なときだけ処理ブロックを動作させる、用途に不要な機能を省くといった最適化により、汎用品の組み合わせよりも効率的な電力制御が可能になります。

04 機能安全・長期供給への対応

車載や医療、産業用のカメラは、長期間の安定供給や機能安全への対応が求められることがあります。汎用ICのEOL(生産終了)による設計変更リスクを避けるうえでも、開発初期の段階で製造プロセスやパッケージ、代替性、量産数量、機能安全規格への対応を確認しておくことが大切です。

画像処理・カメラ向けASICは高画質・低遅延・省電力の選択肢

カメラ機器では、センサー駆動、信号処理、画像補正、物体認識、電源制御など、多くの機能を限られたスペースと電力条件のなかで実現する必要があります。汎用ICの組み合わせでは、処理性能・消費電力・実装面積・部品供給の面で課題が生じる場合があります。

ASICを活用すれば、製品に必要な画像処理機能を専用回路として最適化でき、カメラ機器に求められる高画質・低遅延・省電力・小型化に対応しやすくなります。CMOSイメージセンサーのデジタル設計から、リアルタイム画像鮮明化、車載カメラ向けカスタムSoC、アナログフロントエンドまで、用途に応じた多様な開発事例が蓄積されています。

既存の汎用ICやISPでは仕様を満たしにくい、実装面積を削減したい、処理遅延を抑えたい、画質を高めたいといった課題がある場合は、ASIC化を検討する価値があります。まずは画像処理・カメラ向けASICの開発実績があるメーカーへ相談してみてはいかがでしょうか。

目的別
ASICメーカー3選

用途に特化した高性能な半導体を実現するための要であるASICは、メーカーによって得意とする領域や対応の柔軟性、設計支援体制に大きな差があります。

ここではASICの導入や開発を検討している企業担当者に向けて、信頼できるASICメーカー3社を厳選。それぞれの特徴や得意分野をわかりやすく紹介します。

汎用アナログ信号
への対応力なら
ジェピコ・セミコンダクター
ジェピコ・セミコンダクター公式HP
引用元:ジェピコ・セミコンダクター公式HP
https://www.jepico-semiconductor.co.jp/
対応可能なプロセスノード

500nm/350nm/250nm/180nm

ASIC開発実績

OA機器/産業機器/住宅関連機器/車載/EOL相当品開発

など
おすすめの理由
  • 信号処理で多数の開発実績あり※1。無電源環境下で動作する低電力のミックスドシグナルIC等、難易度の高い仕様も、自社製品に合わせて実現しやすい
  • ファブレスメーカーとして、ウェハ製造~IC量産出荷まで一貫した品質保証が可能。デリバリ面でも安定した供給体制を構築している。
画像やAI処理などの
先端SoCへの対応力なら
ソシオネクスト
ソシオネクスト公式HP
引用元:ソシオネクスト公式HP
https://www.socionext.com/jp/
対応可能なプロセスノード

90nm/65nm/55nm/40nm/28nm/16nm/12nm/7nm/5nm

ASIC開発実績

TV/LPWA/衛星通信/スマートセンサー

など
おすすめの理由
  • RF通信向けソリューションの実績あり。低消費電力RF設計技術を活かし、カスタムSoCの省電力化を提案。
  • AI処理に対応したSoCを設計。Google Quantum AIと量子制御チップを共同開発※2するなど、先端領域への技術展開を強化。
光通信ネットワーク
への対応力なら
メガチップス
メガチップス公式HP
引用元:メガチップス公式HP
https://www.megachips.co.jp/product/asics/
対応可能なプロセスノード

TSMC:28nm/16nm FFC/5nm/7nm(計画中)
GF:22nm FDSOI/12nm(計画中)

ASIC開発実績

PON向け高速シリアルインターフェース(SerDes)

など
おすすめの理由
  • PON向けバーストモードCDR/SerDes技術で15年以上の開発実績※3(2025年8月調査時点)を有し、上り信号を安定化
  • 5G RU FPGAからASICへの変換により、システム性能を損なうことなく消費電力を最大55%削減※4し、低コスト化を実現

※1参照元:ジェピコ・セミコンダクター公式HP(https://www.jepico-semiconductor.co.jp/)
※2参照元:日経クロステック(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/02214/)
※3参照元:メガチップス公式HP(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)
※4参照元:メガチップス(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)

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