エッジ機器では、センサーで取得したデータをクラウドへ送るだけでなく、機器側で信号処理・判定・制御まで行うケースが増えています。監視カメラ、産業用IoT機器、ウェアラブル機器、医療・ヘルスケア機器などでは、限られたスペースや電源条件のなかで、高速処理・低消費電力・小型化を両立しなければなりません。
こうした要件に対して、汎用ICやマイコン、FPGAの組み合わせだけでは、基板面積・消費電力・処理遅延・部品点数の面で課題が残る場合があります。そこで選択肢となるのが、用途に合わせて回路を最適化するASICです。特にアナログASICやミックスドシグナルASICは、センサー信号の取得・増幅・補正・A/D変換・電源制御などを1チップ化しやすいため、エッジ機器の開発において有効な手段となります。
エッジ機器は、クラウドやサーバーと比べて搭載できる部品数や電源容量に制約があります。一方で、現場でリアルタイムに判断したい、通信量を減らしたい、電池駆動時間を延ばしたいといった要求は高まっています。
たとえば、カメラやセンサーを搭載した機器では、取得した信号をそのままクラウドに送るのではなく、機器側で前処理や特徴抽出を行うことで、通信負荷を抑えられます。また、異常検知や安全制御に使う機器では、クラウドとの通信遅延を待たずに、エッジ側で即時に判断することが重要です。
このような用途では、必要な機能だけを専用回路として集積できるASICが向いています。汎用品を組み合わせる設計と比べて、回路構成を簡素化しやすく、消費電力・処理速度・実装面積を製品仕様に合わせて最適化できる点がメリットです。
エッジ機器向けASICは、AI処理、センサー信号処理、産業用IoT、ウェアラブル・ヘルスケア機器など、さまざまな分野で活用が検討されています。ここでは、エッジ機器におけるASICの導入事例を用途別に紹介します。
エッジAI機器では、画像・音声・振動・温度などのデータを機器側で処理し、異常検知や分類、予測などを行います。従来はクラウド側で処理していたAI演算を機器内で行うことで、通信量の削減やリアルタイム性の向上、プライバシー保護につなげられます。
一方で、エッジAI機器は常時稼働するケースが多く、消費電力や発熱を抑えなければなりません。汎用プロセッサでAI処理を行う場合、必要以上の演算資源を使ってしまい、バッテリー駆動時間や熱設計の面で不利になることがあります。
ASICを活用すれば、推論処理やデータ前処理など、用途に必要な演算だけを専用回路として実装できます。これにより、小型かつ低消費電力なエッジAIシステムの実現が期待できます。OKIでは、低消費電力・小型化を特長とするASICを活用したAIシステムについて紹介しており、エッジ側でAI処理を行う構成の参考になります。
エッジ機器では、温度、圧力、振動、加速度、光、磁気など、さまざまなセンサーを搭載することがあります。センサーから得られる信号は微弱で、ノイズの影響を受けやすいため、アンプやフィルタ、検出回路、A/D変換回路などを適切に設計する必要があります。
個別部品で構成する場合、センサー数が増えるほど基板面積が大きくなり、配線やノイズ対策も複雑になります。また、センサーごとの特性ばらつきに対応するため、ゲイン調整やオフセット補正などの機能も必要です。
アナログASICでは、センサーのドライブ回路、増幅回路、フィルタ回路、検出回路、A/D変換回路などを1チップに集積できます。ジェピコ・セミコンダクターの開発事例では、産業機器向けセンサー信号処理ICとして、高ゲインアンプや柔軟なフィルタ設定、ピークホールド検波回路などを備えた例が紹介されています。
このようなASIC化により、センサー特性に応じたインピーダンス、フィルタ配分、ゲイン配分を最適化しやすくなります。エッジ機器においても、センサー入力から信号処理までを一体化することで、実装面積の削減と信号品質の安定化が期待できます。
エッジ機器向けASICを検討する際は、単に機能を1チップ化するだけでなく、製品として求められる動作条件や量産性まで見据えて仕様を固める必要があります。特にアナログASICでは、センサー特性やノイズ、電源、温度条件などが性能に大きく影響します。
まず確認したいのは、機器側でどこまで処理するかです。すべてのデータをクラウドに送るのか、エッジ側で前処理だけを行うのか、異常判定やAI推論まで行うのかによって、必要な回路規模や消費電力が変わります。
エッジ側で行う処理が増えるほど、演算回路やメモリ、通信インターフェースの設計が重要になります。一方で、クラウドへ送るデータ量を減らせるため、通信コストや遅延を抑えられる可能性があります。ASIC開発では、処理性能・消費電力・通信量のバランスを見ながら、チップに集積する機能を決めることが大切です。
エッジ機器では、センサーの種類や使用環境によって入力信号の大きさ、周波数帯域、ノイズの入り方が異なります。そのため、アンプのゲイン、フィルタ構成、A/D変換の分解能、オフセット補正などを、製品仕様に合わせて設計する必要があります。
汎用ICでは、必要な特性に完全に合わない場合があります。アナログASICであれば、センサーや用途に合わせて回路を最適化できるため、信号品質の向上や不要部品の削減につながります。
電池駆動のエッジ機器では、待機時・測定時・通信時など、動作状態ごとの消費電力を細かく管理する必要があります。必要なときだけ回路を動作させる、処理ブロックごとに電源を制御する、電源ICを最適化するといった設計が重要です。
ASIC化によって、製品の動作パターンに合わせた電源管理回路を組み込めば、汎用品の組み合わせよりも効率的な電力制御が可能になります。特に常時監視型のエッジ機器では、待機時の消費電力をどこまで抑えられるかが製品価値に直結します。
エッジ機器は、産業用や医療・ヘルスケア用途など、長期間の供給が求められる製品に使われることがあります。その場合、汎用ICのEOLによって設計変更が必要になるリスクがあります。
ASIC化は初期開発費が必要ですが、複数の個別部品を1チップにまとめることで、部品点数の削減や調達リスクの整理につながる場合があります。長期供給が必要な製品では、開発初期の段階で、製造プロセス、パッケージ、代替性、量産数量を確認しておくことが重要です。
エッジ機器では、センサー入力、信号処理、AI処理、通信、電源管理など、多くの機能を限られたスペースと電力条件のなかで実現する必要があります。汎用ICの組み合わせでは、基板面積や消費電力、処理遅延、部品供給の面で課題が生じる場合があります。
ASICを活用すれば、製品に必要な機能を専用回路として最適化でき、エッジ機器に求められる小型化・低消費電力化・リアルタイム処理に対応しやすくなります。特にアナログASICやミックスドシグナルASICは、センサー信号処理や電源管理との相性がよく、エッジ機器の性能向上に貢献します。
エッジ機器の開発で、既存の汎用ICでは仕様を満たしにくい、基板面積を削減したい、電池駆動時間を延ばしたい、センサー信号の品質を高めたいといった課題がある場合は、ASIC化を検討する価値があります。
用途に特化した高性能な半導体を実現するための要であるASICは、メーカーによって得意とする領域や対応の柔軟性、設計支援体制に大きな差があります。
ここではASICの導入や開発を検討している企業担当者に向けて、信頼できるASICメーカー3社を厳選。それぞれの特徴や得意分野をわかりやすく紹介します。
500nm/350nm/250nm/180nm
OA機器/産業機器/住宅関連機器/車載/EOL相当品開発

90nm/65nm/55nm/40nm/28nm/16nm/12nm/7nm/5nm
TV/LPWA/衛星通信/スマートセンサー

TSMC:28nm/16nm FFC/5nm/7nm(計画中)
GF:22nm FDSOI/12nm(計画中)
PON向け高速シリアルインターフェース(SerDes)
※1参照元:ジェピコ・セミコンダクター公式HP(https://www.jepico-semiconductor.co.jp/)
※2参照元:日経クロステック(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/02214/)
※3参照元:メガチップス公式HP(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)
※4参照元:メガチップス(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)