「市販ICではスペックが微妙に合わない」「過剰な機能で基板が大きくなる」。産業機器のアナログ回路設計者にとって、こうした悩みは日常的なものです。宇宙分野ではカスタムASICでこの課題を解決してきた実績があります。その技術や選定の考え方は、産業機器のカスタムIC検討にも有効です。
宇宙空間では強い放射線や-150℃〜+150℃の温度変動が電子部品に影響を及ぼします。人工衛星のミッションでは10年以上の連続稼働を要求されるケースも珍しくありません。汎用ICでは耐放射線性や温度範囲の面で要件を満たせない場面が多く存在します。
こうした制約から、ミッションごとに性能や消費電力を最適化したカスタムASICが選ばれてきました。JAXAの火星衛星探査計画MMXでもレーザ高度計用の専用ASICが搭載されています。産業機器で「ちょうどいいICがない」と感じる状況も、汎用品の限界という構造は同じです。
宇宙用ASICの開発で蓄積された技術は、産業機器のセンサー回路にも応用できる知見を含んでいます。
宇宙用ASICの多くは、アナログ増幅回路とデジタルロジックを1チップに統合する混載技術で設計されています。微弱なセンサー信号の増幅からデジタル処理まで、1つのチップ内で完結できる点が特徴です。
宇宙放射線によるビット反転(SEU)やラッチアップ(SEL)への対策も重要な設計要素です。DICE(Dual Interlocked Cell)型フリップフロップなどの専用回路構造を用い、重要データを保護する手法が確立されています。
JAXAの研究では、民生用CMOS 0.35μmプロセスで製造したレーザ高度計用ASICが重イオン照射試験でラッチアップ未発生の結果を示しました。民生プロセスでも設計次第で宇宙品質を達成できる事例です。
京都大学の研究チームは、プラズマ波動観測器のアナログ受信回路をASIC化しました。従来A4サイズの基板が必要だった回路を、名刺サイズ(50mm×90mm)まで縮小しています。電磁界6成分を同時計測する受信回路を5mm角チップに集約した成果は、集積化による小型化と部品点数削減の効果を端的に示すものです。
部品点数が減ればはんだ接合箇所も少なくなり、信頼性の向上につながります。産業機器のセンサー基板でも同様の効果が見込めるでしょう。
初めてカスタムASICの外注を検討する際は、開発会社の技術力と対応力を見極める判断基準を持つことが大切です。宇宙ASIC開発で実績のある企業が持つ強みは、産業機器向けの外注先選定にも参考になります。
宇宙分野で培われたASIC技術は、放射線対策だけにとどまりません。厳しい環境条件下でアナログ性能を引き出す設計力は、産業機器のセンサー回路にも応用できる資産です。
「市販ICでは合わない」と感じているなら、まず特定のアナログブロックだけをASIC化する段階的なアプローチも有効な選択肢です。センサー信号処理に実績のある開発パートナーへの技術相談が、課題解決の第一歩になるでしょう。
用途に特化した高性能な半導体を実現するための要であるASICは、メーカーによって得意とする領域や対応の柔軟性、設計支援体制に大きな差があります。
ここではASICの導入や開発を検討している企業担当者に向けて、信頼できるASICメーカー3社を厳選。それぞれの特徴や得意分野をわかりやすく紹介します。

500nm/350nm/250nm/180nm
OA機器/産業機器/住宅関連機器/車載/EOL相当品開発

90nm/65nm/55nm/40nm/28nm/16nm/12nm/7nm/5nm
TV/LPWA/衛星通信/スマートセンサー

TSMC:28nm/16nm FFC/5nm/7nm(計画中)
GF:22nm FDSOI/12nm(計画中)
PON向け高速シリアルインターフェース(SerDes)
※1参照元:ジェピコ公式HP(https://www.jepico.co.jp/analog-asic/development_case.html)
※2参照元:日経クロステック(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/02214/)
※3参照元:メガチップス公式HP(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)
※4参照元:メガチップス(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)