半導体技術の発展により、特定用途に最適化された集積回路「ASIC」は、幅広い分野で欠かせない存在となっています。この記事では、ASICの基本的な仕組みや種類、設計手法、さらにFPGAやCPLDとの違い、カスタムSoCやカスタムLSIとの関連性について解説します。
アナログASICとは、連続的に変化するアナログ信号を扱うことに特化した集積回路です。電圧や電流の微細な変動を直接処理できるため、高精度かつリアルタイムな応答が求められる分野で活用されます。
代表的な用途には、センサーインターフェースやオーディオ回路、無線周波数(RF)回路、電源管理IC(PMIC)などがあり、幅広い電子機器の基盤を支えています。
デジタルASICとは、0と1で表されるデジタル信号を処理するために設計された専用の集積回路です。汎用性を持つCPUやGPUとは異なり、特定の機能に特化して設計されるため、高効率な処理や低消費電力の実現が可能です。
代表的な用途としては、暗号化や圧縮といった通信プロトコル処理、AI推論に用いられる専用チップ、映像処理用プロセッサなどがあります。
ミックスドシグナルASICとは、アナログ回路とデジタル回路を1つのチップに統合した設計の集積回路です。実世界から取得したアナログ信号をデジタルに変換して処理し、必要に応じて再びアナログ信号として出力するシステムに不可欠な存在です。
具体的な応用例には、ADC(アナログ-デジタル変換器)、DAC(デジタル-アナログ変換器)、無線通信モジュール、オーディオコーデック、センサー融合チップなどがあります。
どちらも集積回路ですが、用途や特性に違いがあります。ASICは特定の機能に特化して設計されるため、高い性能や低消費電力を実現できます。一度製造すると仕様変更が難しく、開発には多額の初期投資と時間が必要です。そのため、大量生産が見込まれる製品に適しています。
一方、FPGAは現場で回路構成をプログラム可能で、設計変更が容易です。試作段階や少量生産、仕様変更が頻繁な製品に適しています。
ASICとCPLDは、設計アプローチと用途に違いがあります。ASICは特定の機能に特化して設計されるため、性能や消費電力の最適化が可能です。ただし、開発後の仕様変更が難しく、初期投資や開発期間が長くなる傾向があります。適している用途は、大量生産品です。
一方、CPLDはユーザーがプログラム可能な論理回路を持ち、仕様変更やプロトタイピングに柔軟に対応できます。構造がシンプルで、低消費電力や高速な動作が可能です。ただし、ゲート規模や処理能力はASICやFPGAに比べて小規模であり、複雑な処理には不向きです。
ASICに置き換えるとチップ設計を最適化できるため、チップサイズやパッケージを効率的に設計でき、単価の低減が可能です。また、ASICでは不要な回路を省くことで消費電力を抑えられ、低消費電力化が実現します。論理回路がハードウェア化されているため、電源投入後すぐに動作を開始でき、応答速度の向上も期待できます。
加えて、ユーザー端子数に応じたパッケージ選択が可能なため、部品の小型化も実現可能です。
「フルカスタムASIC設計」は、回路の論理設計からレイアウト設計までをすべてユーザーが手掛ける、自由度の高い設計アプローチです。この手法では、論理回路の構造や配線、セル配置をカスタマイズできるため、性能や消費電力、面積などの要件を厳密に最適化できます。
一方で、設計工数や開発期間が長期化し、設計ミスのリスクも増加するため、長期的な製品供給や高い性能が求められる用途に適しています。
「セミカスタムASIC設計」は、ユーザーが基本的な回路や機能ブロックを組み合わせて設計を行うアプローチで、フルカスタム設計と比較して開発効率が高く、コストや開発期間の短縮が可能です。
ゲートアレイ方式、スタンダードセル方式、エンベデッドアレイ方式などがあり、あらかじめ用意された基本的な論理回路や機能ブロックを組み合わせることで、ユーザーの要求に応じたICを構成します。開発期間の短縮やコスト削減が可能であることに加えて、量産前のプロトタイピングや仕様変更への柔軟な対応も可能です。
まず、要求仕様を基に仕様書を作成し、設計の方向性を定めます。次に、VerilogやVHDLなどのハードウェア記述言語を用いて論理回路を設計し、RTL(Register Transfer Level)設計を行います。
その後、論理合成ツールを使用してゲートレベルのネットリストを生成し、論理等価検証を実施します。続いて、DFT(Design For Testability)を挿入し、テスト容易化設計を行います。
配置配線では、フロアプランやクロック設計を考慮し、タイミング解析を行いながら適切なレイアウトを決定します。配置配線後には、実配線遅延のシミュレーションを通じて論理検証を行い、最終的なサインオフ検証を経て、製造工程に進みます。この一連の工程を通じて、仕様に合致した高品質なASICが完成します。
カスタムSoCとは、特定の用途や企業のニーズに合わせて設計・開発される「System on Chip(システム・オン・チップ)」です。汎用SoCが幅広い製品に対応する汎用性を重視するのに対し、カスタムSoCは使用環境や性能、消費電力、コスト要件に最適化されています。特定用途向けの効率的なシステム実現が可能です。
カスタムLSI(カスタム large-scale integration)とは、特定の用途や顧客の要望に応じて設計・製造される専用の大規模集積回路のことです。汎用のLSIや既製品ICとは異なり、機能・性能・消費電力・サイズ・信頼性などがその目的に合わせて最適化されます。必要な論理や回路だけを取り入れることで余剰を省き、小型・低消費電力を実現可能です。
設計プロセスは、要件定義→アーキテクチャ設計→論理設計→物理設計→検証・試作→量産およびテスト、と段階を追って進められ、時間とコストがかかる一方で、量産時のコスト効率・性能面での優位性が得られます。
IoT機器の発展により、省電力・高性能・小型化・高セキュリティが求められる中、特定用途向けに設計できるASICが注目されています。ASICは不要な処理を省くことで省エネ性を高め、限られたスペースでも高性能・高信頼性を実現。
センサー回路や信号処理機能を1チップに統合でき、リアルタイム制御や高速通信に対応可能です。また暗号化や認証機能を組み込むことで、IoT機器のセキュリティ強化にも貢献します。
5G通信では、高速・低遅延・多数同時接続を実現するため、特定機能に最適化されたASICが重要な役割を果たします。基地局やRANで高効率な信号処理を担い、FPGAよりも低消費電力かつ量産時のコスト効率に優れる点が特徴です。
IntelのeASICなど構造化ASICの登場により、開発期間短縮と経済性の両立も可能になりました。
さらに5nmプロセス技術の進化によって、5GインフラにおけるASICの性能と価値は今後ますます高まっています。
ASICは、アナログ・デジタル・ミックスドシグナルといった種類に加え、フルカスタムやセミカスタムといった設計手法を持つ、多様な応用が可能な集積回路です。FPGAやCPLDとの違いを理解することで、それぞれの役割や適した導入シーンがイメージできます。
また、ASICはメーカーにより得意分野が異なります。要件や目的に合ったASICメーカーを選びましょう。目的別にASICメーカーをまとめた特集ページを用意していますので、併せてご確認ください。
用途に特化した高性能な半導体を実現するための要であるASICは、メーカーによって得意とする領域や対応の柔軟性、設計支援体制に大きな差があります。
ここではASICの導入や開発を検討している企業担当者に向けて、信頼できるASICメーカー3社を厳選。それぞれの特徴や得意分野をわかりやすく紹介します。

500nm/350nm/250nm/180nm
OA機器/産業機器/住宅関連機器/車載/EOL相当品開発

90nm/65nm/55nm/40nm/28nm/16nm/12nm/7nm/5nm
TV/LPWA/衛星通信/スマートセンサー

TSMC:28nm/16nm FFC/5nm/7nm(計画中)
GF:22nm FDSOI/12nm(計画中)
PON向け高速シリアルインターフェース(SerDes)
※1参照元:ジェピコ公式HP(https://www.jepico.co.jp/analog-asic/development_case.html)
※2参照元:日経クロステック(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/02214/)
※3参照元:メガチップス公式HP(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)
※4参照元:メガチップス(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)