電子機器の多くは、複数の電圧で動作する回路の集まりで構成されています。プロセッサ、メモリ、センサー、通信モジュール、アナログ回路などがそれぞれ異なる電源電圧を必要とするため、電源の生成・分配・監視・保護を担う電源回路の設計が、製品の性能・サイズ・信頼性を大きく左右します。
この記事でわかること
こうした電源機能を1チップに集積したのがパワーマネジメントIC(PMIC)です。用途に合わせてDC/DCコンバータやLDO、電源シーケンス制御、保護回路などを最適化する電源・パワーマネジメント向けのASICを活用すれば、汎用の電源ICを複数並べる構成に比べ、実装面積・部品点数・消費電力を削減しやすくなります。特にアナログASICやミックスドシグナルASICは、電源制御とアナログ・センサー回路を1チップ化しやすい点が特長です。
PMICは、用途に応じて次のような電源機能を1チップに集積します。何を集積できるかを押さえると、専用チップ化のメリットが見えてきます。
機器の高機能化に伴い、1台の製品に搭載される電源系統は増える傾向にあります。個別の電源ICやレギュレータを組み合わせる構成では、部品点数が増えるほど基板面積が拡大し、配線や電源シーケンス、ノイズ対策が複雑になります。また、電池駆動機器では、待機時・動作時・通信時など動作状態ごとに消費電力を細かく管理する必要があります。
PMICを活用すると、1つのICで複数の部品へ電源を供給でき、省電力化と回路の小型化を両立しやすくなります。用途に合わせて電源機能を専用チップ化するASICであれば、製品の動作パターンに合わせた電源管理を作り込み、汎用品の組み合わせよりも効率的な電力制御が可能になります。低消費電力が求められる機器では、待機時の消費電力をどこまで抑えられるかが製品価値に直結します。
電源・パワーマネジメントIC向けASICは、プロセッサ向け複合電源、車載電源、低消費電力機器、センサー・アナログ回路との統合など、さまざまな分野で活用されています。まずは4つの事例を一覧で見てから、それぞれを詳しく紹介します。
自動車の電子化・電動化やADASの普及に伴い、車載機器では高い信頼性とノイズ耐性を備えた電源ICが求められます。日清紡マイクロデバイスは、LDOレギュレータやDC/DCコンバータといった電源・パワーマネジメントICを主力製品とし、LDOレギュレータでは世界上位のシェアを持つとされています。
同社は「ノイズに強い車載半導体」をコンセプトに、コア技術を自動車市場や顧客の要求に応じて組み合わせ、ASIC/ASSP製品として仕上げるエンジニアリング力を強みとしています。
POINT 車載特有の信頼性・安全性要件に合わせて電源回路を最適化するアプローチの参考になる事例です。
電池駆動のIoT機器やウェアラブル機器では、微小な電流管理と低消費電力設計が電池の持ち(稼働時間)を左右します。RAMXEEDでは、低消費電力アナログASICの設計における考慮点として、リーク電流の抑制や動作モードごとの電源制御、アナログ回路の最適化などが解説されています。
汎用ICでは実現しにくい細やかな電源制御も、用途に合わせて回路を最適化するアナログASICであれば作り込みやすくなります。
POINT 待機時を含めた消費電力の低減と小型化を両立しやすくなります。
センサー機器では、センサードライブ回路や増幅回路、A/D変換回路とあわせて、それらを駆動する電源回路の設計も必要です。ジェピコ・セミコンダクターの開発事例では、各種センサーのドライブ回路や増幅回路、フィルタ回路、検出回路を最適に配置したアナログASICが紹介されており、電源・アナログ・信号処理を1チップに集約する設計の参考になります。
POINT 電源制御とアナログ回路を統合することで、実装面積の削減と、電源ノイズが信号品質に与える影響の抑制を同時に狙えます。
電源・パワーマネジメントIC向けASICを検討する際は、必要な電源系統や効率、保護機能、信頼性要件を整理したうえで、製品仕様に合わせて集積する機能を決めることが重要です。次の4点を押さえておきましょう。
まず確認したいのは、製品が必要とする電源系統の数と、それぞれの電圧・電流・立ち上げ順序です。系統が多いほど、DC/DCコンバータやLDOをどう配置し、どこまで1チップ化するかの設計が重要になります。必要な機能を整理することで、汎用品の組み合わせとASIC化のどちらが有利かを判断しやすくなります。
電源回路では、変換効率が消費電力と発熱に直結します。効率が低いと発熱が増え、放熱設計や実装面積に影響します。動作条件ごとの負荷を想定し、必要な効率を満たせる回路構成を選ぶことが、製品全体の熱設計とサイズに関わります。
複数の電源を扱う機器では、決められた順序で電源を立ち上げ・遮断する電源シーケンス制御が必要です。あわせて、過電圧・過電流・過熱保護や、電圧監視などの機能をどこまで集積するかを検討します。
CHECK これらを1チップに統合することで、外付け部品の削減と信頼性の向上が期待できます。
車載や産業用の電源ICは、高温環境やノイズへの耐性、長期間の安定供給が求められることがあります。汎用ICのEOL(生産終了)による設計変更リスクを避けるうえでも、開発初期の段階で、製造プロセスやパッケージ、代替性、量産数量、車載向けの信頼性要件を確認しておくことが大切です。
電子機器では、複数の電源系統の生成・分配・監視・保護を、限られたスペースと電力条件のなかで実現する必要があります。汎用の電源ICを組み合わせる構成では、部品点数や実装面積、消費電力、電源シーケンス、部品供給の面で課題が生じる場合があります。
ASICやPMICを活用すれば、製品に必要な電源機能を専用回路として最適化でき、省電力化・小型化・高信頼化に対応しやすくなります。プロセッサ向け複合電源から、車載向けPMIC・ASIC/ASSP、低消費電力機器向けアナログASIC、センサー・アナログ回路との統合まで、用途に応じた多様な開発事例が蓄積されています。
電源回路の部品点数を削減したい、基板面積を小さくしたい、変換効率や待機電力を改善したい、車載・産業用途の信頼性を確保したいといった課題がある場合は、電源・パワーマネジメント向けASICの活用を検討する価値があります。まずは開発実績のあるメーカーへ相談してみてはいかがでしょうか。
用途に特化した高性能な半導体を実現するための要であるASICは、メーカーによって得意とする領域や対応の柔軟性、設計支援体制に大きな差があります。
ここではASICの導入や開発を検討している企業担当者に向けて、信頼できるASICメーカー3社を厳選。それぞれの特徴や得意分野をわかりやすく紹介します。
500nm/350nm/250nm/180nm
OA機器/産業機器/住宅関連機器/車載/EOL相当品開発

90nm/65nm/55nm/40nm/28nm/16nm/12nm/7nm/5nm
TV/LPWA/衛星通信/スマートセンサー

TSMC:28nm/16nm FFC/5nm/7nm(計画中)
GF:22nm FDSOI/12nm(計画中)
PON向け高速シリアルインターフェース(SerDes)
※1参照元:ジェピコ・セミコンダクター公式HP(https://www.jepico-semiconductor.co.jp/)
※2参照元:日経クロステック(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/02214/)
※3参照元:メガチップス公式HP(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)
※4参照元:メガチップス(https://www.megachips.co.jp/product/asics/solution/optical-com/)